経験依存的大脳皮質入力のスクラップ・アンド・ビルドが恐怖反応に及ぼす影響

 

研究代表者
・鳴島 円(生理学研究所 生体恒常性発達研究部門・准教授)W100Q75_narushima

 げっ歯類は、頭上から迫りくるような視覚刺激に対して、素早い逃走、または全く動かないフリージング反応を選択する。最近の知見から、どちらの反応も上丘のパルブアルブミン(PV)陽性ニューロンにトリガーされることが報告されている。上丘は網膜神経節細胞から直接興奮性入力を受ける一方で、行動の選択には周辺の環境に応じた判断が必須であり、そのようなより高次の情報の供給源として、もう一つの興奮性入力源である大脳皮質が考えられる。大脳皮質から上丘への入力は、マウスでは開眼の時期に眼瞼を縫合することで投射線維の刈り込みが促進されて退縮するため、視覚経験強く依存してスクラップ&ビルドされることが示唆されている。しかし、大脳皮質由来入力の経験依存的な変化が上丘PVニューロンの活動性にどのような影響を与えるかは明らかでない。本研究では、感覚入力の外乱や、任意の大脳皮質ニューロン群の繰り返し刺激など、大脳皮質-上丘結合の強度を操作することにより、逃避行動のパターン選択の細胞メカニズムの解明を目指している。

 

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論文

Narushima M, Uchigashima M, Yagasaki Y, Harada T, Nagumo Y, Uesaka N, Hashimoto K, Aiba A, Watanabe M, Miyata M and Kano M
The metabotropic glutamate receptor subtype 1 mediates experience-dependent maintenance of mature synaptic connectivity in the visual thalamus
Neuron 91: 1097-1109 (2016)

Rochefort N*, Narushima M*, Grienberger C, Marandi N, Hill D and Konnerth A (*Co-first author)
Development of direction selectivity in mouse cortical neurons.
Neuron 71: 425-32 (2011)