鈴木淳
ミクログリアによるコンパートメント認識とスクラップ&ビルド制御
研究代表者
・鈴木 淳(京都大学 物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)・教授)
真核生物において細胞膜を構成する脂質二重膜は非対称性を有しており、ホスファチジルセリン(PS)は、細胞膜の内側に存在している。しかしながら、この非対称性は生体内において細胞死など様々な局面で崩壊し、PSは細胞表面に露出する。表面に露出したPSは、マクロファージ等の食細胞に認識、貪食されるための”Eat-me signal”として機能し、この貪食過程の阻害は自己免疫疾患を誘発する。PSの細胞表面への露出には脂質を区別なく双方向に輸送するスクランブラーゼが関わるとされていたがその分子的実体は分かっていなかった。我々はこれまでスクランブラーゼを同定することを目的として研究を進め、カルシウム依存的スクランブラーゼ(TMEM16ファミリー)、またカスパーゼ依存的スクランブラーゼ(Xkrファミリー)を同定した。神経系においては、細胞死以外でもシナプスや樹状突起など生きた細胞の一部(コンパートメント)がスクラップされ貪食されることが知られている。またそのスクラップと連動して残るべきシナプス、樹状突起が強化(ビルド)され、ネットワークを構築することが知られている。本研究においては、我々がこれまで免疫学的に捉えてきた貪食システムの概念を神経系において適用することで、神経コンパートメントのスクラップ&ビルド制御の理解を目指す。
論文
Suzuki J, Imanishi E, & Nagata S.
Xkr8 phospholipid scrambling complex in apoptotic phosphatidylserine exposure.
Proc Natl Acad Sci U S A 113: 9509-9514 (2016).
Suzuki J, Denning DP, Imanishi E, Horvitz HR, & Nagata S.
Xk-related protein 8 and CED-8 promote phosphatidylserine exposure in apoptotic cells.
Science 341: 403-406 (2013).
Suzuki J, Umeda M, Sims PJ, & Nagata S.
Calcium-dependent phospholipid scrambling by TMEM16F.
Nature 468: 834-838 (2010).